がん診療についてがん治療に新たな選択肢【放射線治療】

がん診療についてがん治療に新たな選択肢【放射線治療】

高精度放射線治療装置 リニアック

勤医協中央病院では日本医学放射線学会放射線治療専門医を中心としたチーム医療を強化し、従来のがん治療に定位照射を融合させる体制を整えました。


他診療科の医師と連携し診療にあたり、患者さんへの負担軽減・入院期間の短縮を実現しています。他院でがん治療中の患者さんや神経麻痺による症状の緩和を目的とした緊急照射も積極的に受け入れています。



常勤・専従の専門スタッフによる定位放射線治療を提供

常勤・専従の専門スタッフによる定位放射線治療を提供

放射線科 医長

出倉 康裕 でくら やすひろ

日本医学放射線学会放射線治療専門医

当院の放射線治療は北海道大学病院からの非常勤医師のみの体制で2013年に開始しましたが、2020年6月からは常勤の専従医師を迎え、診療放射線技師(医学物理士2人含む)と専任看護師と共にチームを組み、三次元原体照射と定位照射を提供できるようになりました。


放射線治療は、手術治療や化学療法が中心だった日本のがん治療の中で新たに注目されている放射線を使った治療です。
中でも定位放射線治療は、放射線治療装置の高度な精度管理技術を有している常勤の専従医療従事者がいる医療機関でのみ行うことができる専門治療です。



定位放射線治療は早期がんなどの根治治療から、術後や化学療法中の少数個転移性腫瘍の長期制御、また緩和ケア領域での転移性骨腫瘍に対する効果など、幅広い活用が期待できる治療法です。

早期肺がんなどでは手術と遜色ない治療成績が期待できたり、転移性腫瘍では従来の治療法と比較してより長期の制御やより副作用の少ない治療を可能としています。


日本では、各医療機関への治療装置の配置が進みましたが、専門医や専従医療従事者の不足により、地域医療で十分に生かされていません。

当院では放射線治療が有効と思われるがん患者さん全てに適切な治療を提供するだけでなく、他院でがん治療を受けている患者さんの放射線治療も積極的に受け入れています。



放射線のメリット

放射線のメリット

  • 体を切らずにがんを治療できる
  • 組織の形態や機能の温存が可能である
  • 高齢でも合併症があっても受けることができる
  • 外来で治療を受けることができる

放射線治療のメカニズム

放射線治療のメカニズム

放射線治療は、がん細胞のDNAを損傷させて小さくしたり死滅させる治療法です。


早期がんにも緩和ケアにも効果を発揮する 放射線治療の進め方

早期がんにも緩和ケアにも効果を発揮する 放射線治療の進め方

勤医協中央病院のがん治療は、病巣部位や病態、各種検査結果などを併せて診療科の主治医が提案し、個々の患者さんに最も適した治療法を決定します。
放射線治療は外科手術や化学療法と併用したり、単独でも行われますが、放射線治療専門医が主治医と情報を共有し、患者さんの病態や全身状態などに考慮し進めます。


当院での放射線照射方法



2013年開始 三次元原体照射

  • 主な適応:範囲が広がったり転移したがんなど


病巣の形に合わせて照射する範囲の形をコンピュータで制御しながら放射線を集中させます。

2020年開始 定位照射

主な適応:小さな早期がんや少数個転移性腫瘍など


小さな範囲に高い線量の照射が可能なため、病巣周辺の正常組織への線量を抑え副作用を低減しつつ高い治療効果を得ることができます。

当院放射線科での主な対象疾患



根治照射:がん細胞を死滅させることで根治(治癒)をめざす


緩和照射:薬では抑えられない骨転移による疼痛などを緩和する


  • 止血照射
    胃がん・婦人科がんによる出血などを止める
  • 緊急照射
    がん病変の脊髄圧迫による神経麻痺などを緩和する

治療計画の立案

専門医が放射線照射の方法と治療計画を立案します。


治療用固定具の作成

治療する部位や体型にあった個別の固定具を作成します。


治療装置での位置決め

無理なく安定した姿勢で位置決めができるよう、診療放射線技師や看護師が患者さんの体位を整えます。


放射線の照射

診療放射線技師が装置を操作し、照射計画に従い病巣に放射線を照射します。
※実際に照射される時間は病態によって異なりますが、数分単位で痛みは一切ありません。

高い治療効果と患者負担の軽減を両立させる

高い治療効果と患者負担の軽減を両立させる

放射線治療を始める前には放射線治療専門医が診察し、患者さんが安心して治療を受けられるよう十分に説明を行います。

正確に高精度な照射を行うため、体型に合った固定具を作成しCTやMRの画像データを基に専門医が照射方法を決め治療計画を作成します。


治療計画とは、放射線をがんの病巣に限局的に照射できるよう、コンピュータを用いて放射線の角度や強度などを計算しシミュレーションを行い、最も適切な照射範囲や回数などを決めることです。


1回で治療が完了することもあれば平日に毎日一定線量の放射線照射を数日、または数週間続けることもあります。

その効果は外科手術と同等かそれ以上のことも多くあります。

三次元原体照射は病巣の形に沿って治療でき、定位照射は数ミリから3㎝程度の小さな病巣の早期がん治療を得意としています。
病巣に高い線量を集中照射することで治療効果を高め、周りの正常組織へ障害を最小限に抑えます。

いずれも臓器の形態や機能をできるだけ保ちながらの治療をめざしています。


また患者さんの負担をできるだけ減らすために、治療スケジュールの短縮にも積極的に取り組んでいます。
早期乳がんでは乳房温存手術と術後の放射線治療を組み合わせた「乳房温存療法」が一般的ですが、従来よりも2週間程度治療期間を短縮させたスケジュールを積極的に検討し、治療をめざすことに加えて、患者さんの望む生活を維持できるような取り組みも行っています。



治療中から治療後も有害事象を見逃さない

治療中から治療後も有害事象を見逃さない

放射線治療の有害事象(副作用)には治療中や治療直後に発現する急性期のものだけでなく、治療開始数ヵ月から、まれに数十年後に発現する晩期のものがあります。
急性期の症状は全身倦怠感や皮膚・粘膜障害が主ですが、晩期は組織の虚血、出血や壊死などが問題になることがあります。

有害事象が発現しないよう精度の高い照射を行い、発現しても早期に発見し、すぐに治療を行えるよう、定期的に専門医が診察し経過観察を行います。
通院や入院、在宅診療へと移行しても、看護師同士が所属を越えて情報を共有し合うことで、有害事象を継続的にフォローします。

放射線治療装置の精度管理で安全性と治療効果を高める
医学物理士による放射線量の測定・検証

放射線治療装置の精度管理で安全性と治療効果を高める
医学物理士による放射線量の測定・検証

画像診断や放射線治療の技術が飛躍的に進歩したことで小さな病変の診断やわずか数ミリのがん病巣にも放射線照射が可能になりました。

勤医協中央病院では医学物理士が放射線治療装置の放射線量を測定・確認し、治療の精度と正確性・安全性を高めています。


放射線治療のメリットを最大限に引き出すために

専用機器を使って装置の精度を確認する

医学物理士の伊藤秀毅主任

放射線治療のメリットを最大限に引き出すために


放射線治療を受ける全患者さんの、治療計画は専門医が立案しますが、複雑なプロセスを伴うため、治療装置の精度管理と照射を担当する医学物理士も治療計画を確認・検証し、安全性を高めています。

患者さんの全体像や治療目的を把握し、治療台の上で患者さんの体位を整える際には、患者さんへの負担が少なく照射角度や照射野に影響しない最適なポジショニングに配慮します。
放射線治療は中断してしまうと期待する効果が得られないことから、患者さんが最後まで安全に安心して治療を受けられるよう、治療中の患者さんの心身の状態を観察・把握し、気になる変化があれば医師に相談します。

放射線治療室には診療放射線技師が(うち医学物理士2人)所属し、緊急搬送されてきたがん患者さんの出血や神経麻痺に対する放射線照射にも24時間体制を整えて対応しています。

毎朝のミーティングで、医師と看護師、診療放射線技師が患者情報を共有し、放射線治療専門チームとして質の高いがん治療に取り組んでいます。



放射線治療に欠かせない専門職 医学物理士

定位放射線治療には高精度の照射が必要なため、専門技術を有している医学物理士が装置の精度管理を担当しています。
医学物理士認定機構が実施する認定試験および認定審査に合格した医学物理の専門職です。



放射線治療のチーム医療の目的


  • 複数科で治療方針を検討し適切な医療を提供する
  • 患者さんの価値観やライフスタイルに配慮する
  • 患者さんによって異なる有害事象を早期発見する
  • 外来・病棟で情報を共有し患者支援に生かす
  • 早期リハビリテーションを導入し生活の質を維持する
  • 管理栄養士による食事指導や栄養管理で回復力を高める

治療中・治療後のフォローで患者さんの心と体の負担を軽減
外来と病棟の看護師がカルテを共有

治療中・治療後のフォローで患者さんの心と体の負担を軽減
外来と病棟の看護師がカルテを共有

放射線治療にはがん病巣の縮小や活動性を低下させる効果があり、緩和照射は病変の進行を抑え、つらい症状の緩和も期待できます。
緩和照射は病変の、進行を抑え、つらい症状の緩和も期待できます。

ところが、「放射線」への誤解や偏見から「危険な治療」といった間違ったイメージを持っている方も多いようです。
看護師はその誤解を取り除き、不安を軽減する役割も担っています。


  • 安心して治療を続けられるよう細やかなケアを


安心して治療を続けられるよう細やかなケアを

安心して治療を続けられるよう細やかなケアを

放射線治療は全身状態が悪い患者さんや合併症のある高齢患者さんでも受けることが可能ですが、放射線に漠然とした不安を感じていたり、治療の流れを十分に理解できていない患者さんも少なくありません。


外来で放射線治療を受ける患者さんも多く、不安の軽減は外来看護師の重要な役割の一つです。
専任の看護師が放射線科での初回診察時に同席し、治療に対する患者さんの受け止めや理解度などを把握。
個々人の状況に合わせて対応し、治療中の留意点やセルフケアについても分かりやすく説明します。
治療のメリットを生かしデメリットをサポートするケアを心がけています。


そのため重要視しているのが、看護師間での患者情報の共有です。

当院の入院患者さんに退院後の放射線治療が決まった場合には、外来看護師が病棟カンファレンスに同席したり、自分が得た情報を電子カルテに追加するなど、治療に関わるスタッフが所属を越えて積極的に協働を図ります。特に有害事象の発現には個人差があるため、気になる変化は報告し合いながら経過を観察します。

より高い治療効果を得られるケアを提供できるよう、病棟と外来の看護師が連携し学びあっています。




地域の医療機関の皆さまへ

地域の医療機関の皆さまへ

勤医協中央病院では、他院に通院・入院している、がんの「放射線治療」も行っています。お気軽にご相談ください。

※治療を希望される患者さんは、かかりつけの医師にご相談ください。


放射線治療に関する地域の医療機関からの診察予約の流れ

放射線治療に関する地域の医療機関からの診察予約の流れ

  • 「外来診療予約・検査予約 申込用紙」に必要事項をご記入の上、診療情報提供書(様式は問いません)とともにFAXで送信ください。
    ※「外来診療予約・検査予約 申込用紙」は当院ホームページからダウンロードできます。
    ※お急ぎの場合は直接お電話でご連絡ください。担当医につなぎます。

    患者さんのご紹介(診察予約・検査予約)
  • 申込用紙を受領後、担当の医師に相談した上で予約調整を行い、患者さんの診察日を紹介依頼の医療機関にお知らせいたします。
    画像データを含む資料の提供は、「事前郵送」が基本ですが、間に合わない場合は「当日持参」をお願いします。
  • 予約当日は、問診や診療、場合によっては検査も行います。
    時間に余裕を持って来院されるよう、紹介患者さんにお伝えください。
  • 当院での診療結果は、郵送またはFAXでご報告いたします。
    必要に応じて、各医療機関での継続診療をお願いいたします。

紹介依頼についての問い合わせ先

勤医協中央病院 連携課

011-787-7037
011-784-2735


【受付時間】


 9:00~17:00

 9:00~12:30(休診:第4土曜・祝日)


最終更新日:2021年12月