救急科2年目研修医

北海道メディカルラリー 〜Dai Hard優勝の軌跡〜

2019/11/26

皆様いかがお過ごしでしょうか。勤医協中央病院初期研修医2年の小泉と申します。この度北海道メディカルラリーへ参加致しましたのでご報告させていただきます。

・“メディカルラリー”とは
Prehospital Medicine。限られた資源の中で如何にして患者の生命を維持しE Rへ繋げるか。それは医の根源、究極の医療と言っても過言では無いでしょう。そんな救急医療の中でも相当なウェイトを占める病院前救護をシミュレーション方式で競い合う。それがメディカルラリーであります。全国的に開催されており、ここ北海道では毎年旭川で行われております。

・チーム医療
メディカルラリー最大の特色は救急隊員、医師、看護師様々な医療職混合の多国籍軍が編成されるという点です。我がチームは当院救急科田口センター長を監督とし、多職種で編成したチーム「Dai Hard」です。チーム編成後は血の滲むような練習をひたすら2ヶ月間行いました。この練習期間に私達の絆は確固たるものとなっていきました。

・出陣之巻
9月某日、一行は北海道旭川市にいました。決戦の舞台は、人口34万人北海道一大都市旭川の医療を支える旭川医科大学でした。迷路のような構内を突き進み小さな講堂で出番を待ちます。
日程は2日間で通常ステージ6個、サービスステージ2個で構成されています。それぞれのステージでは3人1チームを作ります。すべてのステージを紹介すると長くなりますので、それぞれ1つ紹介しましょう。

・隣室の刺客
通常ステージ2日目。要請内容「高齢男性が自宅で動けなくなっていると、近隣住民から通報。」チーム編成は救命救急士資格を持つ隊長と、他2名救急隊員で構成しました。隊長が自宅内に入ると高齢男性と思しき患者がベッドに臥床。通報人から隊長が事情調子、隊員2名は患者のバイタルサイン含め情報収集。事態はスムーズに進行したかに思えました。しかし、目の前に倒れているのは“おじいちゃん”ではなく“おばあちゃん”だったということが隊長の事情聴取により判明したのです。これは非常に実臨床に即したシチュエーションでした。隊長はすぐに隣室の存在に気づくと、そこには32℃の室内で息も絶え絶えのおじいちゃんがいたのでした。複数傷病者に対しても救急隊チームは的確に動き、患者家族へのコンタクトにも成功し、このブースでは非常に優秀な得点を獲得しました。

・挫折
サービスステージでは全員参加しストレッチャー移動、胸骨圧迫等のタイムや質を競うものです。私は胸骨圧迫のステージが印象的でしたので紹介させていただきます。
胸骨圧迫ステージでは模型に対し1分間胸骨圧迫を行い、質をコンピュータで評価します。1分間というのは意外と長く、張り詰めた緊張の中ひたすら胸骨圧迫を続けているとさらに時間が経つのが遅く感じました。やっとの思いで全員終了し点数発表です。チームDai Hardからは100点満点が2人も出ました。しかし、私に突きつけられたのはあまりに残酷な現実でした。そう、私の胸骨圧迫は0点だったのです。膝から崩れ落ちる私にチームの仲間は「どんまい!」 「気にすんな!」と温かい言葉で励ますのでした。これはDai Hardのチームワークが窺える一場面でした。

・実質優勝
結果発表がやってきました。それぞれのブースの総評の後、総合成績が発表されます。なんと最下位から3位まで発表されたのですが未だそこにDai Hardの名前はありませんでした。そしてもう一つ残ったチームは宿敵「札幌ISLS」でした。このチームはDai Hardと同じく他職種混合、そして当院研修医、看護師も所属するチームでした。奇しくも両チーム一騎討ちの様相を呈しましたが、僅差で我が「Dai Hard」は優勝を手にした、、、かに思えました。しかし優勝写真をドヤ顔で撮影した後に、実は僅差で2位だったことが判明しました。
これは非常に悔しい結果ですが、きっと来年こそは雪辱を晴らすための布石に違いありません。頼もしい後輩が来年は「Dai Hard」をきっと優勝に導いてくれるでしょう。

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