がん診療について患者さんの人生を支える【がん診療】
がん診療について患者さんの人生を支える【がん診療】
勤医協中央病院では、がん患者さん一人一人との対話を重要視し、人生観を理解・尊重した上で必要な医療を十分に提供できるよう、がん診療に関わる医師や看護師、薬剤師、リハビリテーションセラピスト、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどが果たすそれぞれの役割を充実させ、高い治療効果をめざしています。
日本では毎年約100万人ががんになり、約38万人ががんが原因で死亡する
日本では毎年約100万人ががんになり、約38万人ががんが原因で死亡する
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターが2022年6月に発表した2022年のがん罹患数の予測は約102万人で、がん死亡数の予測は約38万人です。
2人に1人が罹患し、3人に1人ががんで死亡しているといわれています。
1981年以来、日本人の死因第1位はがんです。
誰もが罹患する可能性のある病気ですが、近年になり治癒や延命が期待できる治療法や新薬が次々と開発されています。
勤医協中央病院では特に「肺がん・消化器がん・乳がん・血液がん」などの治療に力を注ぎ、より治療効果を得られる「チームによる診療体制」を整えています。
患者さんやご家族との対話やコミュニケーションを重要視
患者さんやご家族との対話やコミュニケーションを重要視
がん治療は個々の体力や合併症の有無によって選択できるようになりました。
外科手術だけでなく、放射線治療や薬物療法なども第一選択に用いられています。
しかし、がん治療に関する情報は氾濫しており、不適切な民間療法や根拠の乏しい医療行為もいまだ存在しています。そうした中で、患者さんやご家族は不安を募らせ、担当医から示された治療法に不満を感じたり、自分が受けるべき治療を取捨選択できないで悩む患者さんは少なくありません。
その背景にあるのは「医療者とのコミュニケーション不足」です。当院では関わる全職種が患者さんやご家族との対話を重要視し、患者さんの病態と要望を把握しながらがん治療を進めます。
患者さんが自分らしい人生を歩めるようチームで関わりながら、闘病を支援する仕組みやマニュアルづくりも始めています。
納得・安心のがん治療を提供するために院内外の体制を構築
納得・安心のがん治療を提供するために院内外の体制を構築
当院は「標準治療」を適切に提供できる体制や設備が整った「北海道がん診療連携指定病院」です。標準治療は言葉の印象から、「並みの治療」と誤解されることが少なくありませんが、「現時点で受けることが可能な最善・最良の治療」のことです。
当院ではがんの標準治療を「納得・安心できる最善・最良の治療」として提供するため、がん診療に携わる全専門職と各診療科の専門医が連携し、総合的に医療を提供できるチーム体制を構築しています。
退院後の在宅療養でも必要な治療が迅速かつ適切に継続できるよう、地域の医療機関や訪問看護ステーションなどと直接つながっています。
勤医協中央病院におけるがん診療の多職種チーム医療体制
勤医協中央病院におけるがん診療の多職種チーム医療体制
各専門職が同じ目標を共有し主体的な専門力を発揮するために
がん診療の現場では、複数の専門職が一人の患者さんを診る「多職種が参加するチーム医療」のメリットが欠かせないものになりました。
それぞれが患者さんと直接関わり、専門職として把握した問題を多職種が参加するカンファレンスで議論し、がん患者さんの病態や社会的背景などを理解しつつ、「目の前にいる患者さんに対してどのような治療や支援を行うことが最も良いのか」を見いだします。
基礎疾患や合併症を持つ患者さんにも適切ながん治療と生活支援を
基礎疾患や合併症を持つ患者さんにも適切ながん治療と生活支援を
がん患者さんの高齢化が進む中で、基礎疾患や合併症の治療とがん治療を同時に行うケースも増えていますが、各診療科の専門医が日常的に連携・協働している当院では複数の疾患を持つ患者さんを診ている実績があります。
担当医が単独で治療方針を決めるのではなく、抗がん剤治療に伴う副作用マネジメントを行う薬剤師、治療効果を高める栄養摂取をサポートする管理栄養士、体力低下予防訓練を行うリハビリテーションセラピストなど、一人の患者さんに各専門職が関わり、チームワークによって、「安全で質の高い治療」と「安心で温かい医療」を両立させます。
転移や再発が分かった場合には、治療の可能性について多職種で検討し患者さんと相談し合い、症状が出現した場合には緩和ケアチームとも連携して関わるようにしています。
![]() | 急変時の診察や入院にも対応 |
通院や在宅療養中に体調が急変しても、当院の救急センターでは24時間365日いつでも診察を受けることができます。
必要に応じ、精密検査や入院治療も可能です。
![]() | 対話を重要視する外来、病棟の看護師 |
各専門職が、患者さんの病気の状態や社会的背景を把握し関わるためには、対話の機会が多い看護師からの情報提供は欠かせません。
入院でも外来でも患者さんやご家族の意向を確認し尊重できるような関わりを重要視し、継続看護の実践を進めています。
今後の希望や価値観などは、個々の電子カルテに記録。
院内関係者への情報発信が多職種連携を支えています。
![]() | 面談による服薬指導を行う薬剤師(がん薬物療法認定薬剤師、外来がん治療認定薬剤師) |
がん治療薬に伴う副作用の予防やコントロールが可能になり、治療を長期継続できるようになりました。
副作用の発現を早期に把握・対処するため、入院時も外来通院時も薬剤師が患者さんと直接面談します。
がん治療薬に内服薬を処方するケースが増加し、調剤薬局で内服薬を受け取ることが多くなっているため、治療スケジュール表やお薬手帳で情報を提供し、当院のホームページにレジメン情報も掲載しています。
また、「東区がん薬剤師研究会」に参加し、地域共通の書式を情報共有ツールとして導入。副作用を早期に把握・対処できる院外の体制づくりを進めています。
![]() | 緩和ケアを外来と病棟で提供(緩和医療専門医 、がん看護専門看護師、緩和ケア認定看護師) |
緩和ケア外来とホスピスケアセンター(24床)を有し、「その人らしさを支える」を目標に掲げたチームが専門的な緩和ケアを提供しています。
緩和ケアは診断時から検討し、早期導入によるメリットをがん治療に生かしています。
![]() | 低栄養を予防する管理栄養士 |
がん患者さんに適切な栄養管理を行うことが、治療経過の良好な維持につながります。
がん患者さんは治療の副作用によって食事摂取量が低下し栄養低下に陥りやすいことから、入院・外来の患者さんと直接面談し、個々の状態に合わせた食事内容をアドバイスしています。
![]() | すぐに適切に動く相談窓口 |
相談の内容によって、がん化学療法看護認定看
護師や緩和ケア認定看護師、ソーシャルワーカーなどが応じます。「すぐに適切に動く」をモットーにした相談対応をめざしています。
![]() | 生活動作を支援するリハビリテーションセラピスト |
がん治療中や治療後も体力や生活動作を維持し、患者さん本人の希望する生活が送れるよう運動療法や生活動作の練習などを行います。
治療の副作用について多職種で共有しながら体調に合わせてリハビリテーションを実施し、骨転移により骨が弱くなっている場合は骨折を予防しながら安全に生活できるよう、動作練習や環境調整も行います。
当院では、骨転移による骨折のリスクや管理方法を主治医・整形外科医が連携して対応するシステムを整備しています。
![]() | 地域医療機関の患者さんをスムーズに受け入れ |
連携課では、がん診療の地域連携に積極的に取り組んでいます。
地域の病院や診療所の紹介患者さんを受け入れ、スムーズに検査・受診・入院へとつなぎます。
治療後は地域の医療機関に逆紹介を行います。
無料・低額診療制度をご存じですか
無料・低額診療制度をご存じですか
経済的な理由で治療が困難な患者さんを積極的に受け入れています
勤医協中央病院では、経済的な困難を抱えている人も必要な医療を受けることができるよう、社会保障制度を有効に活用し、無料・低額診療や障害年金の相談・申請を行っています。差額ベッド料も徴収していません。
特にがん治療においては薬代が高額になったり、これまで通り働くことができなくなった場合に経済的な不安を抱える方も少なくありません。
患者さんが医療費への不安から受診を控えたり、受診回数を減らしたりすることのないよう、ソーシャルワーカーが事情を伺い制度の利用が必要とされた場合は適用の手続きを行います。
当院での無料・低額診療は、社会福祉法(昭和26年法律第45号)に基づく第二種社会福祉事業であり、公益社団法人の公益事業として実施されています。
無料・低額診療 適用事例
経済的な理由で諦めていたがん治療を当院で再開・継続
単身高齢女性患者さん
他の病院でがん治療を受けていましたが、貯金が底をつき通院できなくなりました。
勤医協中央病院なら経済的に困窮していてもがん治療を受けられると聞いて転院。今は安心して治療を続けています。
当院での無料・低額診療制度 申請までの流れ
※適用とならない場合でも、公的な制度や社会資源の活用、生活改善の方向などを担当職員が一緒に考えます。
ソーシャルワーカーに電話で直接相談することもできます。
医療福祉課
受付時間
平日 9:00~17:00 / 土曜 9:00 ~ 12:30
[休診日] 第4土曜・祝日
■他院へ通院・入院中の患者さんでもご相談いただけます。
「患者さんの生き方」を支えるがん診療のために ACPプロジェクトに取り組んでいます
勤医協中央病院ではアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を臨床現場に浸透させる取り組みを進めています。
患者さんの生き方や希望を理解しながら必要な医療をチームで判断・実践します。
患者さんの希望は病状や精神的な状態によって変化するため、ACPは継続性が必要です。
医療を受ける側と提供する側で信頼関係をつくり、日常的な会話や情報交換を大切にしながら進められます。
患者さんが希望する治療を最期まで提供することを基本としていますが、「医療的に回復する可能性がある」と判断できる場合は、医療の専門家として介入・提案します。
当院では各職種と患者さんの日常会話から拾い集めた「その人らしい一言」を記録に残し、関係するスタッフと情報を共有化する仕組みづくりを進めています。
この取り組みは、緩和医療でも生かされています。
定期的に研修会を実施し、全職員の理解促進に努めています。
アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)とは
人生の最終段階における医療に人生観や価値観を反映させることを目的として、患者本人や家族、医療スタッフがあらかじめ話し合う取り組み
最終更新日:2022年12月