整形外科-疾患治療基準-

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整形外科 疾患治療基準

2003年1月作成

Ⅰ:脊椎疾患

A. 腰部椎間板へルニアおよび腰椎疾患

診断、検査

  • 理学的所見、神経学的所見が重要、単純X線もとる。
  • 診断困難な例や神経症状を伴うものに対してMRIをとる。
  • 神経障害の診断に筋電図検査を行うことがある。

保存治療

  1. 急性期
    • 安静(絶対安静の必要はなく、痛みの強くならない範囲で動いてよい)
    • 非ステロイド性抗炎症鎮痛剤(内服、坐薬)、筋弛緩薬、外用薬
    • 腰椎固定バンドやコルセットの使用
    • 難治性の下肢神経症状に対して仙骨裂孔ブロック、硬膜外ブロックを施行(説明同意書あり)
  2. 慢性腰痛
    • 理学療法士による腰痛体操指導、パンフレットを用いた生活指導

手術治療

  • 下肢の筋力低下、排尿障害を伴うものは、早急にMRIにて原因を特定し、改善しないものは手術治療を検討する。
  • また、3ヶ月の保存的治療で下肢神経症状の改善しないもの、保存治療で下肢神経症状のコントロールがつかないもの、悪化するものに対して手術治療を選択。
  • 手術法は、障害を受けている神経(神経根、馬尾)に対する除圧を基本とし、腰椎の不安定性が強いものに対しては固定術を追加する(手術治療の経過の詳細はクリティカルパスを参照)

B. 頚椎疾患(主に頚椎症、頚椎椎間板へルニア)

診断、検査

  • 理学的所見、神経学的所見が重要、単純X線もとる。
  • 診断困難な例や神経症状を伴うものに対してMRIをとる。
  • 神経障客の診断に筋電図検査を行うことがある。

保存治療

  1. 急性期
    • 頚部の安静、後屈を避ける、激しく動かさない。
    • 頚椎カラーの使用は激痛の場合のみに限定し、短期間、長くとも3週間以内とする。
    • 非ステロイド性抗炎症鎮痛剤(内服、坐薬)、筋弛緩薬、外用薬の使用。
  2. 慢性期
    • 理学療法士による頸椎等尺運動指導による筋力強化訓練、神経障害のない例にストレッチ指導など。

手術治療

  1. 神経根症
    • 上肢筋力低下を伴うものは、早急にMRIにて原因を特定し、改善しないものは手術治療を検討する。
    • また、3ヶ月の保存的治療で上肢神経症状の改善しないものに対して前方固定術を選択
    • 非ステロイド性抗炎症鎮痛剤(内服、坐薬)、筋弛緩薬、外用薬の使用。
  2. 脊髄症
    • 歩行障害、手指巧緻運動障害の強いものに対して手術を検討する
    • 手術方法は前方病変で2椎間以内のものは前方固定を、3椎間以上のもの、後方病変のもの、脊柱管狭窄例は後方椎弓拡大術を基本とする (手術治療の経過の詳細はクリティカルパスを参照)

Ⅱ:関節疾患

A. 人工膝関節全置換術

  • 変形性膝関節症、リウマチ性膝関節症などの変性疾患を対象とする。神経障害性関節症は原則的に禁忌である。
  • 上記による日常生活の困難が、3ヶ月以上の外来保存療法にもかかわらず解決しないもので、人工膝関節手術により日常生活能力の向上が期待できるものに限る
  • 人工膝関節の耐久性に鑑み、原則として60歳以上に限定する。それ以下に適応する場合は、再置換の必要性について特別にインフォームド・コンセントする。
  • 当院で配布している「全人工膝関節をご希望の方へ」などを用いたインフォームド・コンセントに同意するもの。可能な限り、ご家族にも同意していただく。事前に、主治医の判断により必要な健康診査を行う。とくに気を配るべき併存症・既往症は、虚血性心疾患・高度の肺機能障害・出血傾向・肺塞栓症や深部静脈血栓症の既往・明らかな活動性感染巣の存在などである。

B. 人工股関節全置換術

  • 変形性股関節症、リウマチ性股関節症、大腿骨頭壊死症などの変性疾患を対象とする。神経障害性関節症は原則的に禁忌である。
  • 上記による日常生活の困難が、3ヶ月以上の外来保存療法にもかかわらず解決しないもので、人工股関節手術により日常生活能力の向上が期待できるものに限る。
  • 人工股関節の耐久性に鑑み、原則として60歳以上に限定する。それ以下に適応する場合は、再置換の必要性について特別にインフォームド・コンセントする。
  • 院で配当布している「全人工股関節をご希望の方へ」などを用いたインフォームド・コンセントに同意するもの。可能な限り、ご家族にも同意していただく。
  • 事前に、主治医の判断により必要な健康診査を行う。とくに気を配るべき併存症・既往症は、虚血性心疾患・高度の肺機能障害・出血傾向・肺塞栓症・深部静1脈血栓症の既往・明らかな活動性感染巣の存在などである。

C. 大腿骨近位部骨折

  • 大腿骨頚部骨折(内側骨折)は原則的に人工骨頭置換術(セメント固定)の適応である。
  • 外転型骨折は例外的にキャニュレイテッド・ヒップ・スクリュー固定(以下C-CHS)を適応する。
  • 併存症などの条件により人工骨頭置換術が適応できない場合にもC-CHSを適応する場合がある。その場合は骨頭壊死・偽関節の可能性について特別のインフォームド・コンセントを要する。
  • 大腿骨転子部骨折(外側骨折)は原則的に観血的骨接合術の適応である。現在はPFNail法を第1選択としているが、骨折型・術者の選択・その他の理由によりCompression Hip Screw法やEndar法などを採用することを妨げない。
  • インフォームド・コンセントの内容として最低限下記の項目に同意していただくこと

※ 手術しないで骨折癒合の得られる可能性はほとんどなく、まして歩行能力を再獲得する可能性は全くありません。だから可能な限り手術をお薦めします。
※ しかしからだの弱った方に起きる骨折なのでさまざまな合併症があり得ます。 例えば、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓、脳梗塞、術創感染症(→人工物抜去)、再骨折、偽関節、骨頭壊死など。
※ また入院中にも転倒し再受傷する危険性は否定できません。
※ 痴呆・不穏の場合、当院の基準により「抑制」「鎮静」する場合があります。
※ 最善の治療をしても受傷前の歩行能力までにはいたらない場合が多い。

Ⅲ:手の外科疾患

A.上肢・手の外科総論

  1. 手部の名称
    • MP関節は伸展拘縮を起こしやすい。
    • PIP関節は屈曲拘縮を起こしやすい。
    • 母指は内転拘縮を起こしやすい。
  2. 代表的な異常肢位
    1. Flat hand:縦横方向のアーチが失われた手(不注意なギプス包帯装着等)
    2. Intrinsic minus肢位(鈎爪変形claw hand):示指~小指MP関節過伸展、IP関節屈曲。低位正中、尺骨神経麻痺。
    3. 猿手(ape hand):母指球筋の麻痺。
    4. Intrinsic plus肢位:示指~小指MP関節屈曲、IP関節伸展。骨間筋拘縮。
    5. 風車翼指:とくにMP関節の屈曲と尺屈が合併する場合。(MP関節のリウマチの場合)
    6. 母指内転肢位 thumb-in-palm position:痙性麻痺、やけどの後遺症。
    7. 指のswan-neck変形:示指?小指のPIP関節過伸展、DIP関節二次的軽度屈曲、MP関節屈曲。
    8. 指のボタン穴変形:示指~小指のPIP関節屈曲、DIP関節二次的軽度過伸展。
    9. 槌指(mallet finger):DIP関節屈曲、PIP関節過伸展。
  3. 上肢の末梢神経
    筋肉支配
    1. 正中神経:橈側の屈筋・骨間筋、母指球筋
    2. 尺骨神経:尺側の屈筋・骨間筋、小指球筋
    3. 橈骨神経:伸筋群
  4. 手部の知覚支配(別記)
  5. 一般的な術後療法
    早期後療法
    1. 手術上肢挙上位保持
    2. 吸引ドレーン抜去:術後24~48時間
    3. 第1回目包帯交換
      • 無菌手術の場合:一般に術後5日~7日目、ただし遊離植皮術後は3~4日目に行なう。
      • 血液などの浸出による圧迫、血腫形成、化膿などの可能性がある場合:術後2~3日目に。また再接着術後は血腫形成のため術後1日目に行なう。血液などの浸出による圧迫、血腫形成、化膿などの可能性がある場合:術後2~3日目に。また再接着術後は血腫形成のため術後1日目に行なう。
    4. 抜糸:2週後くらい、しかしそれ以後いつ行なってもよい。

B. 疾患各論

  1. 神経剥離術・縫合術・神経移植術
    • 新鮮外傷:骨関節の合併損傷ありうる。特に感染症に注意。
    • 神経移植術:donnerとして上肢では前腕内側皮神経が、下肢では腓腹神経がよく用いられる。
    • 術後療法:手の外科の一般的原則に準ずるが、縫合部の緊張がやや強い場合には1~2週間のシーネ固定を要する。
  2. 拘扼性末梢神経障害
    1. 手根管症候群
        症状:手の正中神経領域の知覚障害〔シビレ、疼痛、知覚鈍麻〕
      • 母指球筋の筋力低下、筋萎縮
      • 起床時に強い、手を繰り返し使用する労働者の利き手、更年期前後の中年の婦人〔両側性のことが多い〕
        検査:X-P〔手関節2R、手根管撮影、頚椎6R〕
      • 神経伝導速度、必要に応じ頚椎MRI
        治療:保存治療〔麻痺のない軽症例や患者が手術を望まない場合〕
      • 投薬、night splint〔手関節固定用シーネ〕
      • 手術治療:手根管開放術
      外来手術:小皮切法と鏡視下法とあり。通常5日~7日間は腫張防止、感染防止を兼ね、あえてガーゼ交換はしない。術翌日から早期に手指の自動運動を開始するよう指導する。術後麻痺の回復経過をみるために1、3、6ヶ月、時に1年後と検診する。
    2. 肘部管症候群
        症状:手指尺側(環指、小指)のしびれと知覚鈍麻、握力の低下、骨間筋の萎縮
        検査:X-P(肘関節2R、尺骨神経溝撮影、頚椎6R〕
      • 神経伝導速度、必要に応じて頚椎MRIなど
      • 治療:診断がついたら原則的には手術治療が行なわれる(一般的には入院で)。
      手術方法は通常、皮下前方移行術を行なう。術後2-3日間のシーネ固定。その後自動運動を主とした運動療法を行う。痛みも強くなく早ければ術後2ないし3週間で就労可である。
    3. 手関節疾患
      1. 解剖(別記)
      2. 外傷
        • 舟状骨骨折:見逃されやすい、骨癒合しづらい
          骨折部の転位がなくかつ離開が1mm以内ならばギプスによる保存治療。
          そうでない場合は手術治療となる。 術後療法:ギプスないしシーネ3週間その後自動運動開始。
          強い握力を要する肉体労働は骨癒合が順調でも3ヶ月後
      3. 変性疾患
        • 月状骨軟化症:月状骨の骨壊死性疾患
          橈骨骨切術
        • TFCC(三角線維軟骨複合体損傷)
          術後療法:尺骨の短縮骨切り術を施行した場合
          術後ギプス4週間ののち可動域訓練
      4. 肘関節
        1. 肘関節形成術:関節リウマチ、変形性関節症
          • 津下式:後外側切開にて関節をすべて展開し滑膜や骨棘などを切除し、さらに拘縮をおこした軟部組織の解離を行って可動域を獲得し、除痛効果も得ようとするもの。
          • 後療法:術後3~7日間シーネ固定その後自動運動およびCPMによる可動域訓練を開始する。
        2. 人工関節置換術:工藤式を使用
          • 適応は主に関節リウマチ
          • 後療法:術後1週間のシーネ固定の後自動運動を開始。3週で抵抗負荷もかけて運動を許可する。
      5. 切断肢・指再接着術
        1. 適応
          • 下肢切断は機能回復の点で絶対適応とはならない。
            指より近位部の切断は絶対適応 母指以外の単独切断は相対的適応 多数指切断でも母指IP関節および他指の中節中央部より遠位部での切断は機能的に不自由さはないことから相対的適応 多数指切断例では最小限pinchができるように母指、示指、中指を再建する。重要な指の再接着を優先(母指→小指) ただし、小児、細い仕事をする人のきき手、未婚特に女性などは美容的な面も考慮して再接着の適応としてよい。
        2. 手術の実際
          • 麻酔:
              伝達麻酔:術後も麻酔効果あり血管の攣縮を防げる
              全身麻酔:長時間の手術(多数指、肢切断など)
            1. 骨の短縮→骨接合
            2. 腱の縫合:屈筋腱・伸筋腱
            3. 神経の縫合
            4. 血管の縫合
              動脈の縫合1~2本→静脈の縫合2~4本
            5. 皮膚の縫合:なるべく余裕をもって、多くは若干の植皮術を要する。
        3. 後療法
          • 血栓形成は血管吻合後20~30分前後に認められ、24時間以内の血流障害が最も多い。3~4日以内までは二次的な浮腫、損傷組織壊死などによる血流障害が発生するため注意が必要。
          • 7~10日間必要に応じて下記の方法を行なう。
            1. 抗凝固剤:凝固時間を指標として20~30分にコントロール
              ヘパリン:10,000単位前後/日
              ワーファリンの内服
            2. 血栓溶解剤
              ウロキナーゼ:18,000単位/日の点滴静注
            3. 低分子デキストラン:10ml/kg/dayの点滴静注
            4. プロスタグランディンの点滴静注