病理科

TOPページ > 診療科・センター機能 > 病理診断科

病理診断科の紹介

2015年6月

  • 「病」気の「理」由をつきとめるのが病理学です。
  • 病理診断とは、顕微鏡を用いて、細胞単位の詳しい観察をおこなう診断部門です。
  • 正確な病理診断には、主治医と病理医とのコミュニケーションが不可欠です。
  • 医学生実習、初期研修、後期研修も受け入れております。

1.「病理」ということばについて

 みなさんは、「病理」ということばをお聞きになったことがあるでしょう。新聞や雑誌などで、「現代社会構造の病理」などということば使いをごらんになったことがあると思います。つまり、病理というのは、なぜこのような異常な状態になったのか、ということを科学的な分析をもとに解明するという意味があります。もともとは、病気になぜなったか、そしてどんな姿をしているかということをつきとめ、研究する分野です。簡単に言えば、病理とは、「病」気の「理」由と考えてもらってもよいと思います。

2.病理診断について

 ここではわたしたちの行っている、病理診断について説明させていただきます。一般的、基本的なことを書かせていただきます。

■細胞レベルの詳しい検査です

 病理診断とは、簡単に言うと、からだから取り出した細胞を、顕微鏡をのぞいて診断することです。この説明だとあまりにも簡単なので、もう少し詳しく説明します。
 患者様の病気の診断方法は、診察、画像診断(レントゲン、エコー、CT、MRIなど)、血液検査など、さまざまなものがありますが、人間のからだを構成する最小単位である細胞のレベルで診断するのが病理診断です。最も詳しい検査なので、ほぼ「最終診断」に近い意味合いがあります。つまり、ほかの画像診断でがんが疑わしくても、病理診断の結果でがんと出なければ、手術や化学療法等のがんの治療にすぐには移行しないのが現状です。

■細胞診について


顕微鏡写真1(パパニコロウ染色):子宮頸部擦過細胞診
正常の子宮頸部の細胞(扁平上皮)

 具体的に説明します。
 尿、子宮頸部、喀痰などの細胞をプレパラートというガラス板にこすりつけて検査するのが細胞診です。当院では細胞診のうち、婦人科領域の件数が最も多いです。また、腹水や胸水がたまったとき、甲状腺や乳腺にしこりなどの病変があるとき、細い針で細胞を吸引して調べることも多く行っています。これは針をからだに刺しておこなうので、「穿刺吸引細胞診」といいます。細胞診は、次に説明する組織診断(組織診)にくらべ、出血等の合併症が少ない一方、細胞がはがれてばらばらになっているため、診断精度としては、組織診にくらべ、やや下がります。しかしながら、子宮がん検診のときにおこなう子宮頚部細胞診は、以下に述べる組織診の結果とほぼ一致し、診断精度は高いとされています。(顕微鏡写真1)

■組織診について


手術検体のきりだしのようす

 次に、組織診断(組織診)について説明します。胃カメラや大腸カメラで生検したもの、肝臓や腎臓の針生検、皮膚生検などは、組織診にはいります。手術で摘出した臓器もほぼ全てが病理検査にまわされ、組織診をおこないます。「生検」した小さな検体は診断を目的としており、胃がんの手術などは、治療と診断を兼ね備えた目的があります。生検でもっとも多い胃カメラや大腸カメラの生検は、がんがあるかどうかを目的としていることが多いですが、胃潰瘍でのヘリコバクターピロリという細菌感染の有無を目的としている場合や、炎症性腸疾患(IBD)という腸炎の一種の検索を目的とした生検はがんとは関係ありません。また、肝機能障害や、蛋白尿や血尿といった腎機能障害の検査のためにおこなう肝生検や腎生検もがんの検査を目的としたものではありません。

■病期(ステージ)と治療手段(エビデンスにもとづいた治療)

 胃がんに限らず、がんでは、病期(ステージ)を決定します。がんの深さあるいは大きさ(T)、リンパ節転移(N)、他臓器転移(M)の検索をおこない、病期を決定します。がんの予後(再発したり、がんで死亡するかどうかの確率)には、リンパ節転移があるか、どれだけ遠くに転移しているかが鍵を握ります。いろいろな予後研究がなされていますが、この、病期が予後にもっとも影響するという報告が多いのが現状です。この、病期にもとづいて、化学療法(抗がん剤)が必要か、放射線治療が必要か、というようなことを、患者様と話しあったうえで決定します。たくさんの患者様のデータから、この病期のときにはこの治療をしたほうがいいということが論文などで発表されています。信頼のおける科学的な根拠は「エビデンス」といいます。もちろん患者様の体調や意志で変わる場合はありますが、基本的には、このエビデンスにもとづいた標準的治療法が推奨されています。

■迅速診断


手術中の迅速病理検査は凍結させて行います

 プレパラートが完成するまでには、およそ2ないし3日かかりますが、手術中など緊急に病理検査をしたい場合は、「迅速診断」をおこなう場合があります。組織切片を液体窒素で急速に凍結させ、プレパラートを作成します。この方法だと、15分程度でできあがります。急いで作っただけあって、標本のできは通常の方法よりはやや劣ります。迅速診断はたとえば、乳がんの手術のさいのセンチネルリンパ節生検が代表例です。センチネルとは門番や用心棒といった意味です。脇とがんのあいだにある、がんに一番近いリンパ節を凍結検査し、そのリンパ節に転移がないと、さらに奥の脇(腋窩)のリンパ節には転移がないという、「エビデンス」にもとづき、脇のリンパ節摘出(郭清)を省略できます。

■免疫のしくみをもちいた染色


がん治療に力を発揮する免疫染色

 補助的な検査法として、免疫反応を応用した免疫組織化学染色もよく用いられる方法です。たとえば、転移したがんが、肺からの転移なのか、甲状腺からの転移なのか、あるいは前立腺からの転移なのか、については、その臓器だけが特異的に作るたんぱく質を免疫学的手法をもちいることによって容易にわかる場合があります。また、乳癌の細胞がエストロゲンという女性ホルモンの受容体、つまり、女性ホルモンで増殖能がアップするがんかどうかを免疫学的に調べることによって、ホルモンを効かなくしてがんを小さくする薬を使うかどうか検討します。


顕微鏡写真2:エストロゲンレセプターの免疫組織化学染色。乳がん細胞の核が茶色に染まってみえます。
エストロゲンという女性ホルモンに反応性する「リセプター」が存在することを示しています。

■分子標的治療について


顕微鏡写真3:HER-2の免疫組織化学染色。
写真2とは異なり、細胞をとりまくように、
細胞膜が茶色に染まっています。
これが強く染まると、ハーセプチンという分子標的
治療の薬の効果がある可能性があります。

 最近は、特定の受容体分子に作用することにより、ある特定のがんや、関節リウマチ等の炎症性疾患の進行を抑えるくすりが開発されました。分子標的治療(生物製剤)といいます。これも、病理検査の手法で適応を判定します。ハーセプチン(乳がん)、リツキサン(B細胞性リンパ腫や早期の関節リウマチ)、イマチニブ(慢性骨髄性白血病や胃腸の間葉系腫瘍GIST)、イレッサ(肺腺癌)など多数の薬剤が開発されています。
 抗がん剤が効くかどうかについても、遺伝子を調べることによりわかる場合があります。これからは、患者様個々人によって使うくすりが違う、いわゆるオーダーメイド医療の時代になってくると思います。

3.診断のむずかしいケースが病理医にとっての先生

 顕微鏡をもちいた詳しい検査といっても、私たち病理医でも判断の難しいケースはたくさんあります。このようなときに、いかにすばやく的確な行動をとれるかどうかが、病理医としてもっとも大切なことだと思います。患者様の職業や病歴、画像診断や、主治医の意見は、病理診断するにあたり、欠かすことができない情報です。主治医とのカンファレンスも重要です。大学病院等、別の病院の病理医に聞くこともあります(コンサルテーション)。このように、病理診断部門は、その病院の精度管理にかかわることにより、患者様に貢献する分野だと思います。精度管理に重要なのは、とくに主治医と病理医間のコミュニケーションだと思っています。

 このように、診断の難しいケースについて、結論を出すまでに時間がかかることがあります。一日でも、一時間でも早く結果を知りたいという患者様の声はごもっともですが、血液検査のように必ずしも決まった日数で結果が出ないこともあることを申し添えます。

 がんの手術治療をとってみても、胃がんや乳がんなどで、切り取る範囲(切除範囲)は以前より狭くなる傾向があります。それとともに、そのがんがとりきれているかどうか、病理診断においてより詳細に検討する必要があります。診断技術の進歩とともに発見されるがんは小さくなってきており、その病理診断もそれとともに難しくなってきている傾向があります。

学術活動・研究業績